京都大学副学長から発出された「飲酒問題及び迷惑行為について」と題する文書への抗議文

 

8月3日、國府寛司・京都大学副学長から熊野寮自治会宛てに、「飲酒問題及び迷惑行為について」と題する文書がメールで送付されました。これは、6月20日に熊野寮自治会が國府副学長に対して提出した、「飲酒問題及び迷惑行為について」に対する抗議文への返答文でした。しかし、その内容は寮自治会の主張・批判を全く無視し、改めて寮自治会への介入を行おうとするものでした。(6月20日に提出した文書の内容や問題化されている事の詳細、寮自治会の立場の説明は別に公開していますのでそちらをご確認ください)  改めてこのような熊野寮の社会的な機能を奪い、営利優先の管理寮へと作り替えようとする大学当局による自治への介入、警察の不当な行為の黙認、それに対する寮自治会の批判を全く無視する姿勢を、熊野寮自治会は断じて認めるわけにはいきません。再度以下のような抗議文を提出しました。  

 寮自治会としても地域住民の方から多くの苦情が来ていることは憂慮していますが、その対応策は寮生同士の議論及び地域住民のみなさまの間の直接の対話によって決められるべきであり、大学当局が決めるものではありません。熊野寮自治会は、地域住民のみなさまと寮自治会の対話・交流の場として、「くまのまつり」等を開催し、自治の理念や警察/大学当局との緊張関係について発信してまいりました。今後とも、同様の取り組みを継続・発展させていく所存ですので、ご理解とご協力をお願いいたします。 

 

以下抗議文(副学長名義の文書は全文

末尾にあります)

 

 

「飲酒問題及び迷惑行為について」に対する抗議文

 

京都大学学生担当理事・副学長

國府寛司 殿

 

 國府副学長が8月3日に熊野寮自治会に送付した「飲酒問題および迷惑行為について」と題するメールを受けて、熊野寮自治会の主張を無視あるいは歪曲した返答内容に強く抗議する。とりわけ、熊野寮自治会を「自己中心的」と罵っておきながら、熊野寮自治会による継続的な飲酒問題への取り組みや地域社会と連帯する取り組みを無視抹殺したに留まらず、警察当局による具体的な違法・無法行為については一切言及せず免罪するという自らの矛盾した言動を自覚し、反省することを求める。以下、副学長の文章に対して詳細に返答する。  

 

 國府副学長は「救急隊員の出動が必要となるような事態を招いたことそれ自体」が問題だと述べる。なるほどその通りである。しかしその解決策は大学当局への「報告書等の提出」では断じてない。先の抗議文で述べた通り、こうした問題はこれまで熊野寮自治会として様々に対応して継続的に取り組んできたのであり、解決主体はあくまでも日々生活を共にする寮生であり、自治会である。毎年100名近い新入寮生を迎え入れ、その度に飲酒に起因する事故やハラスメントを起こさないための注意喚起を行い、現場での対応に当たってきた。今回の件についても、そして未来においても同様である。もとより、熊野寮自治会による寮運営は大学当局との合意の上で結んだ基本確約において保障されている。この組織対組織の契約として自動的に引き継がれるべき確約を國府副学長は「引き継いでいない」と事実上反故にし、大学当局としての当然の責務を放棄している。「報告書等の提出」を求める前に、改めて熊野寮自治会が再三求めてきた確約引き継ぎ団交に応じるところから話を始めるべきである。  

 

 また、國府副学長は「教育上の指導等を行う必要がある」と述べている。我々が知る限り、この「教育上の指導」なるものは大学当局の事実認識と主張を一方的に押し付けるものでしかない。実際にこの10年近くにわたって「教育上の指導」として繰り返されてきた学生処分において、学生側の事実認識や主張が認められた例はなく、「面談」の場には弁護士の同伴すら許さず、再審も一切認めない有様である。それどころか地域住民からの抗議署名を「学外者の名前が入っている」などとして受け取りを拒否したことすらある。さらには無期停学となった学生への「面談」では大学当局側の事実認識と主張を一方的に受け入れ“反省“を表明することが強要されてきた。今回の文書においても、こうした大学当局の都合を一方的に押し付ける態度が強く表れている。以上の事実を見れば、大学当局に対して個人情報を含む「報告書等の提出」を行った場合に当該や他の寮生に対して一方的な弾圧が加えられることを警戒するのは当然であり、「事実を隠蔽するインセンティブ」を働かせている当の大学当局が熊野寮自治会を非難することはできない。熊野寮自治会は、大学当局の「教育上の指導」によらず自らの努力によって問題解決に取り組んできたのであり、今後も寮生の生命と安全を守る義務を果たす。  

 

 さらに國府副学長は「本学が警察と結託して情報の提供を要求している事実はない」と述べている。確かに今回の件に限定すれば「警察と結託」した「事実」はないのかもしれない。しかし大学当局はこれまでキャンパスにおける学生集会やイベントに対して繰り返し京都府警に出動を要請し、時には京都府警への通報や被害届・証拠物品の提出を通じて学生を逮捕させたり、規制強化にあたって京都府警に相談することもあった。これらは事実である。何より、今回の國府副学長の文書において京都府警の行った警察手帳の不提示、盗撮、敷地内への侵入などの違法・無法行為の一切を捨象し免罪している事実から、大学当局と警察の結託を疑わざるを得ない。警察を免罪し、抗議した学生を断罪しようとする大学当局の権威主義的態度に強く抗議する。こうした権力におもねり学生自治に介入する態度は、戦争に加担した反省から生まれた戦後の大学の自治を解体し、京都大学を戦前・戦中の大学へ回帰させる忌むべき態度である。  

 

 最後に、國府副学長が「周辺住民に対する迷惑行為」「自身が行っている行動が周囲にどのような影響を与えるかを一顧だにしない自己中心的な主張」「貴自治会に都合の悪い意見には向き合わないまま理解が得られたものと早合点しているだけ」と述べていることに対して返答する。「周辺住民から複数の強い抗議」があったことは熊野寮自治会として憂慮するところであり、周辺住民への説明責任を果たすよう努めてきた。また、本題ではないが今回の件において最初に拡声器を用いたのは他ならぬ京都府警の側であることは先の抗議文で述べた通りである。熊野寮自治会が開催してきた様々なイベントにおける騒音問題についても、事前の地域への説明に始まり、当日の音量調整など様々な対応策を強化してきた。こうした対応を「不十分」と咎めるならまだしも、「一顧だにしない」などと言われるのは心外である。元々、くまのまつりをはじめとしたイベントは地域交流を求める周辺住民や規制強化によって交流の場を奪われた他大学の学生などの強い要望があって行われているものである。一方、こうしたイベントにおいて大学当局による学生不当処分に抗議する署名が数百の規模で集まっているが、大学当局こそこのような周辺住民の声を無視し続けている。このように、熊野寮自治会を「自己中心的」と非難する國府副学長こそ、騒音問題だけを取り出して都合の悪い意見を無視し、勝手な解釈に基づいて熊野寮自治会が悪いと決めつけている。警察の違法・無法行為については免罪している事実と合わせて、國府副学長の不誠実極まりない態度に抗議する。熊野寮自治会は今後も誇りを持ってこうしたイベントを開催すると同時に、直接に騒音の被害を受ける周辺住民の意見も汲んで信頼関係を育んでいく。  

 

 以上より、熊野寮自治会は、先の抗議文の内容を意図的に無視あるいは歪曲し、大学・警察当局を免罪する國府副学長の態度に強く抗議する。改めて熊野寮自治会は、寮生と近隣住民の自発的交流に基づく信頼関係、並びに熊野寮の自治を破壊しようとする大学・警察当局の弾圧に抗議し、大学当局・副学長が要望する報告書と情報の提出を拒否する。                   以上 

 

2023年10月10日 熊野寮自治会

 

※以下、副学長名義「飲酒問題及び迷惑行為について」全文

 

令和5年8月3日

 熊野寮自治会 御中 

 

学生担当理事・副学長 

國 府 寛 司 

 

飲酒問題及び迷惑行為について

 

  本年6月20日付けで貴自治会より提出のあった抗議文に対し以下の見解を述べ る。

 

  まずは、20歳未満の学生が飲酒をした疑いに関して、貴自治会に報告書等の提出 を要請しているところ、貴自治会は、「人命を最優先して救急通報し、かけつけた救急隊員にも適切に対応した。その上で事後的にも、自治会として再発防止のために経緯を取りまとめ、教訓化している」ことを述べたうえで、「警察当局と大学当局が結託し、 飲酒問題について情報の提供を要求して、熊野寮への介入を企てている」等と述べ、 報告書等の提出を拒否している。しかし、まず問題とすべきは、事後的な対応の適否ではなく、救急隊員の出動が必要となるような事態を招いたことそれ自体である。そもそも、本学が警察と結託して情報の提供を要求している事実などなく、見当違いの主張である。そして、20歳未満の学生が飲酒をした事実があるのであれば、本学として看過することはできず、教育上の指導等を行う必要があること、そのために情報提供を要請することは至極当然である。改めて報告書等の提出を要請する。 

 

 なお、貴自治会は、「大学当局に対する報告は、当局からの介入を恐れて緊急時に救 急通報をせず、泥酔者の発生や泥酔者の個人情報を隠ぺいする方向にインセンティブ を働かせるため、結果として、人命が危険に晒される事態となる」と述べているが、 救急車の出動を要する不適切な飲酒が繰り返されることを前提としているうえ、情報 を隠ぺいするために緊急時の救急通報を行わないことが正当化されるかのような認識 に基づく主張であり、人命を軽視した自己矛盾に陥っていることを付言しておく。 

 

 次に、周辺住民に対する迷惑行為に関して、貴自治会は「正当な抗議活動」、「公益 性のある行動」と述べているが、自身が行っている行動が周囲にどのような影響を与 えるかを一顧だにしない自己中心的な主張である。この迷惑行為に関しては、現に、 周辺住民から複数の強い抗議があったのである。周辺住民からの抗議の内容は、今回 の喧騒のことのみならず、これまでも何度注意しても改善されなかったことや貴自治 会に対し直接苦情を言っても何ら改善されなかったこと、今後改善されない場合は熊 野寮におけるイベントを一切禁じてほしいという要望も含まれている。貴自治会は、 周辺住民との「信頼関係」に繰り返し言及するが、結局のところ、貴自治会に都合の 悪い意見には向き合わないまま理解が得られたものと早合点しているだけであって、 自らが「消極的な『責務』」と述べる「迷惑をかけない」との最低限の責務すら果たせ ていないのが現状である。貴自治会は、周辺住民に多大な迷惑をかけ続けている危機 的状況に目を向け、猛省し、周辺住民に迷惑をかけるような行為は厳に慎み、周辺住 民からこれ以上不信感を持たれないよう最大限努力する必要がある。 

 

 このたび貴自治会が提出した文書からは、貴自治会の危機感や反省の色を一切感じ ることができなかった。極めて残念であるとともに、貴自治会が自治会としての責務 を果たす意思がないと考えざるを得ない。今一度、寮生において真剣に話し合い、慢 心を捨て、周辺住民の迷惑となるような行為を繰り返さないよう改めて要請する。