第3小委員会への返答

 

 3/1付で貴委員会から送られてきた文書に対する反論として5/11に熊野寮自治会が貴委員会宛てに提出した文書において、熊野寮自治会は貴委員会に対していくつもの具体的な説明を要求しています。それらについての具体的な回答をまだ得ていないので、熊野寮自治会は貴委員会に対して引き続きそれら事項についての説明を求めます。

 

Q1:本学の学籍を有する者のための福利厚生施設である熊野寮に、本学の学籍の無い者が居住していることは事実なのか回答を求めます。

 

 熊野寮自治会は、寮自治会が保有する入退寮選考権の行使の一環として、その裁量と空間的制約の範囲内において、必ずしも学籍を保有していない人についても居住を認めてきた経緯があります。 これまでにも幼児と同居しつつ学びを継続する人、精神疾患や身体の不調等で一時的に学籍喪失に追い込まれた人、院試浪人や就職浪人、博士課程満期退学者、京都大学による強権的な放学処分の対象者、内戦下の祖国へ帰れなくなった外国人研究者など、やむを得ない社会的・経済的事情を抱えて熊野寮での居住を要する無学籍者の継続居住を一部認めてきました。これは入退寮選考権を行使して社会的責任を果たすための寮自治会の判断として、社会的な意義があることと考えてきました。例えば、放学処分者に関しては、2017年に放学処分を受けた熊野寮生3名への京大当局の退去勧告に対する寮自治会の反論に、京大当局は再反論しなかったことから、その意義は京大当局も当時認めたものと認識しています。各学生の居住に関しては、これまでも寮内での議論を重ね、個別的かつ定期的に居住の必要性を審査してきました。上述のような柔軟な運用は、1971年確約と日々の寮運営の実践を通じて確立されてきたものです。このような経緯を踏まえた上で、無学籍者の居住に関して現在熊野寮自治会が社会的に置かれている状況に鑑み、必ずしも現状を自明の前提とするのではなく、入退寮選考権を持つ熊野寮自治会の責任として、議論を継続していきます。

 

Q2:熊野寮の居住実態の把握(現在の寮生と各寮生が居住している居室の一覧の提出)の必要性は、「適正な人数の寮生が寄宿していることを確認するため」、また、「寮の施設・設備の維持管理・補修を適切に行い、災害時の対応に万全を期すため」です。したがって、引き続き、現在の寮生と各寮生が居住している居室の一覧の提出を求めます。

 なお、上記質問の回答の有無に関わらず、本学の学籍が無い者の居住について、また、貴自治会の大学に対する要求等について、1〜2時間程度、貴自治会との意見交換を行うための面談を第三小委員会として行いたいと考えています。日程を調整して連絡しますので、責任を持って答えられる代表者を含む3名程度の出席をお願いします。

 

 熊野寮自治会は、京都大学当局と取り結んだ確約に基づいて、京都大学の福利厚生施設として熊野寮を自主的に運営しています。71年確約に基づいて、入退寮選考権は熊野寮自治会がこれを保持し、京大の学籍を有することを条件に入寮募集を行っています。また71年確約により居住者を担保するための方法として京都大学新聞に年1回入退寮者の氏名を公表することで合意しており、実際に熊野寮自治会はこれを行っています。従って、京大新聞の紙面を丹念に追えば、「現在の寮生」の一覧を把握することができると考えます。

 まず、「適正な人数の寮生が寄宿していることを確認する」ために、「各寮生が居住している居室の一覧」という情報が必要の無いことは明らかと思います。また、京大新聞で公表されている入退寮者の氏名を丹念に追って頂ければ、寄宿している人数は確認できると思いますので、そのようにして頂きたいと思います。

 「寮の施設・設備の維持管理・補修を適切に行い、災害時の対応に万全を期すため」に、「各寮生が居住している居室の一覧」という情報が必要である理由について、より詳しい説明を求めます。「寮の施設・設備の維持管理・補修」は、熊野寮が京都大学の福利厚生施設として機能するために、誰がどこに居住しているかという属人性によらず行われる必要があるものですし、実際にこれまでも「寮の施設・設備の維持管理・補修」は「各寮生が居住している居室の一覧」という情報を寮自治会が提供すること無く行われてきました。故に、「寮の施設・設備の維持管理・補修」のために「各寮生が居住している居室の一覧」という情報が必要であるとは考えられず、それを寮自治会が提出する必要は無いと判断しています。「各寮生が居住している居室の一覧」が「寮の施設・設備の維持管理・補修」のために特に必要となるような事情の変化があったのであれば、それを説明して頂きたく思います。また、「災害時の対応に万全を期す」ということに関しても、なぜ寮生の氏名だけでなく「各寮生が居住している居室の一覧」という情報が必要となるのか、災害時においてそれを利用して具体的にどのような対応を行う必要があると考えているのか、詳しい説明

を求めます。

 なお、「各寮生が居住している居室の一覧」とは、寮生のプライバシーに関わる極めて重大な情報です。京都大学の福利厚生施設としての熊野寮において寮生が安心して生活することができるために、確約に基づいて寮の日常的運営を行っている寮自治会の責任において、相手が大学当局であるとしても、「各寮生が居住している居室の一覧」を熊野寮自治会がみだりに外部に漏らすことは、熊野寮の福利厚生施設としての本旨に反する可能性があることから、不適当であると考えています。

 故に、上で申し上げたような、「各寮生が居住している居室の一覧」が「適正な人数の寮生が寄宿していることを確認」し「寮の施設・設備の維持管理・補修を適切に行い、災害時の対応に万全を期すため」に必要である理由を大学当局から説明頂いたとしても、熊野寮自治会がプライバシーの問題を勘案してもなお、それを提出するために十分な理由があると判断しない限り、「各寮生が居住している居室の一覧」を提出することはないことを、ご理解頂きたいと思います。

 最後になりましたが、貴委員会が仰る「意見交換を行うための面談」とは、確約に定められた団体交渉のことと理解してよろしいでしょうか。 熊野寮自治会は、「3名程度」の少人数交渉ではなく寮側の人間が全員出席できるという前提の下、以下の2つの条件のいずれかを満たす場合には積極的に貴委員会との対話に応じます。

・副学長または副学長から全権の委任を受けた人物が出席し、その人物が責任を持って寮自治会との合意形成に基づいてその場において大学としての意思決定を行うという、確約に定められた団体交渉と同等の権能を有する会議として貴委員会の言う「意見交換」を開催すること。

・上述の団体交渉に副学長が応じることを前提に、その前段階として事前に論点を整理するために通例行っている「予備折衝」として、貴委員会の言う「意見交換」を開催すること。

 熊野寮自治会が貴委員会との単なる「意見交換」には応じられない理由を申し上げます。まず第一には、冒頭でも申し上げたように熊野寮自治会が貴委員会に提出した文書において要求した質問等の項目に対して、文書ですら誠実に回答しない貴委員会と、何らかの意見交換が対面でなら成立するとは到底考えられないことです。第二には、過去に吉田寮が川添副学長(当時)との少人数での意見交換に応じた結果として、意見交換会は2回で打ち切られ、当局が吉田寮との意見交換に応じたという体裁を取るために意見交換会が利用されたことを考えると、単なる意見交換は意味が無いばかりか寮自治会にとって明らかに利が無いからです。

 

以上

 

2022年10月11日 熊野寮自治会