京大当局による大学構内への警察大量導入に対する抗議声明

2021年12月20日

熊野寮自治会

 

 2021年12月3日正午、本学本部構内に50人をゆうに超える公安警察及び機動隊が動員される騒動があった。これは、熊野寮祭の恒例企画である「時計台占拠」に先んじて、同企画の開催を阻止するために周辺に警察官を配置し、同企画で用いる梯子を持った学生らが入構した瞬間に警官隊も入構してくるというものであった。その中で、梯子を持っていた学生らに10名ほどの警察官が襲い掛かり、梯子を奪い取ろうとし、一時危険な状態になった。その後、京大の象徴であるクスノキ前を警察官はしばらく占拠し、学生の抗議を受けて後退してもなお、1時間に渡り時計台前及び時計台内に滞在した。京大当局は、同年11月24日付告示第7号において、同企画を「危険な企画」と一方的に決めつけ禁止しているにもかかわらず、前段のように警察官の導入により安全な企画進行を妨害し学生を危険に晒している。

 

 これら一連の京大当局による大学構内への警察大量導入行為は、大学自治に対する深刻な破壊行為である(注1)。我々は断固としてこれに抗議するとともに、学生に対する暴力的な威圧を行った京都府警に抗議する。学生に対し恒例行事であった時計台占拠を一方的に禁止するにとどまらず、それを建造物侵入として刑事事件化せんとする役員会を筆頭とする京大当局の姿勢は、第一に大学の構成員である学生を意思決定から排除している点で問題であり、自ら学生を犯罪者に仕立て上げようという点でも非常に悪意的である。

 

 そもそも今回の時計台占拠は単なる恒例行事ではない。京大当局は、真摯な対話を望む学生の願いを踏みにじるのみならず、学生が聴取を受ける際の弁護士の立ち合い拒否及び教授会での決定の半ば強制的な歪曲など、学生や教職員から自由と人権を奪いつつある。そのような京大当局に対して自由と人権を取り戻す抗議活動として本企画は行われたものであり、意図に照らし合わせて正当かつ意義深いものであったと考えている(注2)。

 

 このように、職員による時計台占拠の禁止自体が不当な状態で、警察権力をいたずらに導入し、学生を暴力的に排除するという人権侵害を促す行為を、京大当局が積極的に行ったという事実は、1969年11.20確認書(注3)から2003年12.3確認書(注4)に於いても重ねて確認されてきた内容にも反するものである。大学自治を破壊する行為であり、到底看過することはできない。熊野寮自治会は、本件において警察に通報した京大当局、および時計台占拠を阻害した京都府警に対し、公の場で説明及び謝罪をすることを求める。

 

 なお、京大当局は、同年12月15日、「熊野寮自治会関係者による暴力的な行為について」と題する声明をホームページに掲載した。この声明は、京大当局および京都府警による上述の自治破壊および人権侵害を棚に上げ、熊野寮自治会と時計台占拠参加者を中傷すると同時に、大学での自主的な活動を萎縮させようとするものである。断じて許容できない。よってまた、熊野寮自治会は京大当局に対し、この声明を即時撤回し、自ら壊した大学自治の修復に向けて尽力することを求める。

 

 

 

 

(注1)

大学自治と警察権力との関係をめぐっては、東大ポポロ事件の第一審判決に「学問の自由は、思想、言論、集会等の自由と共に、憲法上保障されている。これらの自由が保障されるのは、それらが外部からの干渉を排除して自由であることによつてのみ、真理の探求が可能となり、学問に委せられた諸種の課題の正しい解明の道が開かれるからである。しかるに、他からの干渉は、主として警察権力乃至政治勢力の介入乃至抑圧という形で行われ易いことは、むしろ歴史的な経験ですらある。......かくの如く、少くとも学問以外の外部権力から開放された学問の自由を確保することによつてのみ、学問的真理への道が塞息されることを免れるのである。......かくして学問の研究並びに教育の場としての大学は、警察権力乃至政治勢力の干渉、抑圧を受けてはならないという意味において自由でなければならないし、学生、教員の学問的活動一般は自由でなければならない。そして、この自由が他からの干渉を受けないためには、これを確保するための制度的乃至情況的保障がなければならない。それは大学の自治である。」とある。この判決自身はのちに覆されたものだが、この度、警察権力が大学に入構したことは、過去数十年間、維持されてきた大学の自治に対する一線を越えた踏み込みである。

 

(注2)

詳しくは今年の時計台占拠の声明文を参照

https://twitter.com/kuma_d_fes/status/1466629353522237447?s=20

具体的な当局の行動としては、例えば2020年時計台占拠に関する学生処分において、京大当局は、処分に至る正当な証拠を学生本人にも教授会にも一切開示もせず、聴取のための呼び出しにおいても弁護士の立会いを拒否した。これにより事実関係の確認も一切進まないまま手続きが進行した上に、証拠開示と弁護士立会いを要求していたことを以て反省の色がないとした。また、総合人間学部教授会の上申した処分案は最終的な処分の決定に際し総長及び総長の指名した大学上層部(学生懲戒委員会)に覆された。

こうした当局の行いに対して様々な団体が対話を求め、熊野寮自治会も昨年の時計台占拠において真摯な対話を求める声明文(https://kumano-ryo.jimdofree.com/)を出したが、無視されている。

 

(注3)

1969年11.20確認書に於いて、奥田東総長は

「国家権力の大学自治への介入に反対し、財界・政界など外部勢力による大学支配をやめさせ大学の自治を守る」

「機動隊の常駐・学内パトロールが大学自治の破壊や民主的な自治活動・組合活動の抑圧になる場合には、それに反対する。」

「『大学の自治は教授会の自治である』という従来の考え方の誤りを認め、学生・院生・教員・職員などすべての大学構成員が、それぞれ固有の権利をもって大学の自治を形成していることを確認する。」

などを確認した。この度の京大当局の警察動員は、ここで認められていた内容を無視した行動である。

 

(注4)

2003年12.3確認書に於いて、長尾総長は

「これまで大学と学生など当事者との間でなされてきた話し合いの内容や交わされた確約については、法人化後も責任を持って引き継ぐ。組織再編にあたっては、話し合われた内容や交わされた確約を引き継ぐべき組織を、当該再編を議論する段階から明確にし、責任を持った引き継ぎが行われるようにする。」

「法人化にあたり、福利厚生・自主活動の場に対して、評価による制裁を通じた間接的なものを含め、政府による介入は絶対にない。」

 

などを確認した。この度の京大当局の警察動員は、法人化にあたってここで認められていた内容を無視した行動である。