熊野寮生3名に対する無期停学処分の撤回を求める声明

 

京都大学熊野寮自治会

京都大学総長 山極壽一 殿 

 

 2019年9月10日付けで熊野寮生3名に対し無期停学処分が下されました。3名の行った行為はどれも「職員の行為を妨害」したものであり、京都大学通則第32条第1項に規定する「学生の本分を守らない」行為であるとされたためです。今回の処分について、以下の2点から抗議します。

 

①大学職員の行為の正当性を検証する場がない

 3名の行為・言動は、京都大学当局(以下、当局)の一方的な決定とそれを遂行する職員に対する抗議として行われました。

 学生との話し合いが一切行われない中で、当局の決定に従う職員は自らの職務を強硬的・暴力的に全うしようとし、学生がそれに抗議すれば否応なしに処分が下されます。正当性が検証されていない職務行為への妨害を理由とした処分は撤回されるべきです。

 

②そもそも懲戒規程の内容が恣意的に運用できるものである

「京都大学学生懲戒規程」(平成29年2月28日 達示第103号全部改正)において懲戒の対象は「学生の本分を守らない者」とされ、さらにここでは「京都大学の諸規程又は命令に違反した者」がその具体的な項目の一つとして記されています。

これによって当局の意思決定及びそれに従う職員の行為に反する学生を恣意的に処分することができるため、この規程による処分は撤回されるべきです。

 

 今回の処分は、立て看板規制や吉田寮現棟明け渡し訴訟、11月祭への介入など、当局が学生への規制・弾圧を推進する渦中で行われています。

 今後も当局が抗議する学生を処分することは容易に想像でき、その影響は現在だけでなく未来の京大生にまで及びます。大学の在り方を考える学生の権利・主体性が剥奪され、当局の意思決定に学生が反論し抗議することすらできない状況は、理性と言論の府たる大学において看過されるものではありません。  

 

 熊野寮自治会は、寮生3名に対する無期停学処分の即時撤回、今後同様の形で学生を処分しないこと、そして今後の大学運営においては当事者である学生との話し合いを踏まえたうえで意思決定がなされることを求めます。



2019年10月18日



▼京都大学による公式発表「学生の懲戒処分について」(2019年9月12日)

(http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/kyoiku-suishin-gakusei-shien/kosei/news/2019/190912_1.html)

 本学は、文学部4回生1名、工学部4回生1名、総合人間学部4回生1名を、令和元年9月10日付けで、以下のとおり懲戒処分とすることを決定しました。

処分内容

1.文学部4回生1名を、京都大学通則第32条に定める「学生の本分を守らない者」として、令和元年9月10日付けで同通則第33条に定める停学(無期)処分とした。

 

2.工学部4回生1名を、京都大学通則第32条に定める「学生の本分を守らない者」として、令和元年9月10日付けで同通則第33条に定める停学(無期)処分とした。

 

3.総合人間学部4回生1名を、京都大学通則第32条に定める「学生の本分を守らない者」として、令和元年9月10日付けで同通則第33条に定める停学(無期)処分とした。

 

処分理由

1.文学部学生

 当該学生は、平成30年8月9日、オープンキャンパス初日に本部構内のクスノキ東側に設置された巨大工作物の一部に座り込み、当該工作物を撤去しようとする職員の行為を妨害するなどした。

 また、当該学生は、平成30年9月27日及び同年10月18日、教育推進・学生支援部棟2階の厚生課窓口及び廊下において、不審者を取り押さえようとする職員の行為を妨害するなどした。

 これらのことは、京都大学学生懲戒規程第3条第5号「前各号に準ずる不適切な行為を行った」に該当し、京都大学通則第32条第1項に規定する「学生の本分を守らない」行為である。

 よって、本学は、今回の行為の事実関係について調査を行い、慎重に審議した結果、当該学生を停学(無期)処分とすることとした。

 

2.工学部学生

 当該学生は、平成30年9月27日及び同年10月18日、教育推進・学生支援部棟2階の厚生課窓口及び廊下において、不審者を取り押さえようとする職員の行為を妨害するなどした。

  また、当該学生は、平成30年10月3日、吉田南構内において立入禁止対象者を構外へ連れ出そうとする職員の行為を妨害するなどした。

 これらのことは、京都大学学生懲戒規程第3条第5号「前各号に準ずる不適切な行為を行った」に該当し、京都大学通則第32条第1項に規定する「学生の本分を守らない」行為である。

 よって、本学は、今回の行為の事実関係について調査を行い、慎重に審議した結果、当該学生を停学(無期)処分とすることとした。

 

3.総合人間学部学生

 当該学生は、平成30年9月27日及び同年10月18日、教育推進・学生支援部棟2階の厚生課窓口及び廊下において、不審者を取り押さえようとする職員の行為を妨害するなどした。

  このことは、京都大学学生懲戒規程第3条第5号「前各号に準ずる不適切な行為を行った」に該当し、京都大学通則第32条第1項に規定する「学生の本分を守らない」行為である。

 よって、本学は、今回の行為の事実関係について調査を行い、慎重に審議した結果、当該学生を停学(無期)処分とすることとした。

 

▼今回の処分で用いられた規程

「京都大学学生懲戒規程」(平成29年2月28日 達示第103号全部改正)

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/organization/other/revision/documents/h28/t103-28.pdf

 

▼補足Ⅰ.不審者取り押さえ時の状況

3名に共通する処分理由である上記の「平成30年9月27日及び同年10月18日」の件は、熊野寮自治会による要求書提出の際に起こった出来事です。この際、2017年7月25日付で京都大学を放学処分となり、同年10月2日付で学外者として敷地内立入禁止とされた髙田暁典がストッキングとフルフェイスヘルメットを被り、水色のネズミの着ぐるみを装って提出行動に参加していました。10月18日の要求書提出後、職員約8名が彼を取り押さえ、顔を隠した素性不明の不審者として警察に引き渡し、不退去罪の現行犯として逮捕させました。

職員は退去しようとしていた髙田を大人数で取り押さえ、その手を踏みつけて流血させ、彼の退去を暴力的に阻止していました。この取り押さえ方に対し、寮生3名は職員と高田の間に割って入る、職員を高田から引き剥がすなどして、それを阻止しようとしました。

 

▼補足Ⅱ.近年の京大内の管理強化について

ここ数年、大学職員は顔を隠して活動する学生を取り締まっています。顔を隠した状態で学内に入ろうとする学生に対し素顔をさらせと職員が要求し、拒否した学生に対しては不審者と断定し学外に強制的に排除します。顔を確認することで個人を特定し、学内での行動を逐一監視したり、学部・研究室の教授を通しての脅しをかけたりなど、あらゆる形で学生に対し圧力をかけています。オープンキャンパスなどで着ぐるみを着て学内で宣伝活動している学生もいますが、顔を隠している学生は無条件で全員排除というわけではなく、職員の一存で強制排除されるかどうかが決まります。