抗議文

京都大学総長 山極壽一殿

同厚生補導担当副学長 川添信介殿

 

2019年2月12日付で京都大学及び川添副学長名義で発表された「吉田寮の今後のあり方について」及び「現在吉田寮に居住する者へ」と題する文書に対し、熊野寮自治会として強く抗議する。

今回の文書で述べられている新棟移住者に対して課せられる条件のうち、特に以下の部分について抗議する。

・(b)「2.暫定的な寄宿料月額400円と光熱水料を,学生が個々に本学に納付すること」は個別負担の適用・寮自治会の役割の否定である。

・(b)「4.寮生又は寮生の団体として入寮募集を行わないこと。」及び「5.管理上やむを得ない事由があって本学が指示したときは,定められた期限までに新棟から退居し,本学が措置する代替宿舎その他住居に転居すること。」は入退寮選考権の否定である。

 

このような寮自治に必要な権利が奪われることは,寮自治の根幹を揺るがすと同時に、学生による自治を事実上否定するものであり、看過できない。そもそも,学生自治・寮自治は歴史的に,そして現在・将来にわたって切実に必要とされるものである。以下その根拠を述べる。

 

①学生自治は大学自治の要である

そもそも学生自治は、大学の自治を保障する役割を担うものとして存在してきた。政府の御用機関になり下がった戦前の帝国大学の反省にならい、戦後日本の大学は権力から独立した教育研究機関として大学の自治を維持してきた。しかし、大学の意思決定が理事など当局の一部の上層によってのみ行われるのであれば、大学は先述の歴史を軽視した選択を行うおそれがあり、戦前の帝国大学と同様の道を歩むこともありうる。したがって、大学が真の意味で大学の自治を守るためには、学内の構成員と社会全体による評価に基づいて大学の運営を行わなければならない。この大学の方針に対する評価を,学内において組織的かつ率先して行い,大学のあるべき姿を守ってきたものが、教授会自治と学生自治である。吉田寮の自治をはじめとして学内の学生自治を失うことは、大学が、進むべきものとは違った方針へ向かう第一歩となる。

 

②寮自治はより良い生活を作っていくために必要なものである

学生寮をはじめとして、大学の学生のための組織を学生が自主的に運営することは大いに意義のあることである。上から押し付けられる規則ではなく、状況を最も熟知している当事者自らの柔軟な判断で物事を決定し問題に対処することで、より良い結果を導くことが可能だからである。例えば熊野寮は当初、男子日本人学部生のみに入寮の権利が与えられていたが、教育の機会均等・反差別の観点から寮自治会自らの判断で、女性、留学生、研究生や聴講生にまでその門戸を開放してきた。そうして入寮してきた様々な立場の人々が安心して暮らせる寮作りに、自治会を挙げて取り組んでこられたのも学生自治あってのことである。加えて、当局の授業料免除規程のような画一的な基準ではなく、個々の事情に柔軟に対応する形での入寮選考は、様々な経済事情を抱えた学生が進学してくる実情のなかで、必要とされているものである。ほかにも身体的な困難を抱えて独力での生活が厳しい人などを自治会として集団生活の中で支える判断をしたこともある。学生寮における自治を失うことは、よりよい福利厚生施設としての在り方、共同生活の在り方を実現できなくなることを意味する。

 

このように、大学における学生自治、とりわけ寮自治は、尊重されるべきかけがえのない価値を含んでいる。この価値を守るために不断の努力を続けてきた学生の意志を踏みにじる今回の貴殿の発表に対し、大学自治を尊重する学内の一団体として、および吉田寮と同様に寮自治を行う団体として抗議の意を表する。

 

2019年2月21日

京都大学熊野寮自治会


吉田寮新棟の入寮募集停止等に反対する声明

 

熊野寮自治会は2月12日に京都大学が発表した吉田寮に関する方針(※)に反対する。方針における主たる問題点は以下の三点である。

 

①2019年度の吉田寮への入寮を事実上否定している。

②吉田寮自治会による新入寮生の募集を否定している。

③自治会の機能を否定することによって、学生の利益を阻害している。

 

以下に、なぜこの三点が問題であるのかを述べる。

 

①2019年度の吉田寮への入寮を事実上否定している。

現在、吉田寮は京大進学者等にとっての経済的基盤となっている。京大を志望している人の中にも、経済的に困窮する人は多数いる。その人たちにとって、安価な寄宿舎の存在は、大学進学の可否をも左右する重要な事項であり、学問する権利と直結する。

しかし、大学の出した方針は2019年度の吉田寮への入寮を事実上否定している。吉田寮への門戸を大学が閉ざすということは、京大で学問をしたい、しているすべての学生への福利厚生を狭める行為であり、許されることではない。

特に耐震性に問題のない新棟の2019年度入寮募集停止については、その客観的な必要性が皆無である。

 

②吉田寮自治会による新入寮生の募集を否定している。

吉田寮の新入寮生の募集は、吉田寮自治会が行ってきたが、大学の出した方針では、今後それを行うことを禁止している。しかし、入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考を行うためには、寮の入寮募集を寮生自らが行う必要がある。

例えば、授業料免除や奨学金は親の収入や学校での成績で決まるが、そういった大学の画一的基準では汲みきれない個人の事情によって、安価な寄宿舎を必要とする人もいる。家庭状況によっては授業料を自ら稼がなければいけない学生もいれば、本人に非がなくとも大学からの経済的支援が打ち切られる学生もいる。授業料を自分で工面することに時間を割かれる、病気を患う、等のやむを得ない事情によって留年する学生もいるが、留年すれば基本的に支援は打ち切られる。

また、ストーカー被害や親によるハラスメントからのシェルターとして寮を必要とする学生に対しては柔軟に対応してきた。

こうした入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考は、学生自らが、寮を必要としている人は誰なのか、誰にひらかれているべきなのかを検討していく中でこそ行うことが可能となっている。

 

③自治会の機能を否定することによって、学生の利益を阻害している。

現在、新入寮生の募集は寮自治会が行っており、寄宿料(家賃)の支払いも自治会単位で取りまとめて行っている。しかし、大学の方針はその二点を明確に否定している。寄宿料を個人単位で納付すること、大学による入寮選考は、自治会の役割を否定し、学生という弱い立場の個人への管理・統制を強める。

入退寮者選考を大学が管理すれば、大学側の不当な圧力によって、学生を選別することが可能になる。最近でも京大の理事である川添副学長による学生の恫喝が報道されており、大学による不当な圧力は学生にとって無縁とは言えない問題である。

また、寄宿料の支払いも自治会単位で取りまとめて行うことによって、個人単位の圧力をかけさせることなく、安価な寄宿料を維持してきた。しかし、全国の寮の例を見ると寄宿料は値上げされる傾向にある。京大でも、女子寮は建て替えを経て大幅に寄宿料が値上がりした。吉田寮の新棟における安価な寄宿料の据え置きは、自治会という組織による交渉抜きにはありえなかった。

弱い立場の学生が、寮自治会という組織を作ることで学生の利益を体現してきたのである。

 

よって、熊野寮自治会は、2月12日に京都大学が発表した吉田寮に関する方針に反対し、今後も学生主体による寮運営を行っていく。

 

(※)「吉田寮の今後のあり方について(2019年02月12日)」及び「現在吉田寮に居住する者へ(2019年02月12日)」

 

吉田寮公式サイト