2017年12月13日

京都府警察本部

京都地方裁判所第2民事部合議係 裁判官 松浦 佑樹

川端警察署警備課長 五十川 雅洋

 京都大学熊野寮自治会

抗 議 文

       

 

京都府警察本部による2017年10月31日の京都大学熊野寮(以下、寮と記す)への家宅捜索において、公安警察・機動隊による不当行為・人権侵害が数多く行われた。寮自治会として強く抗議する。

今回の家宅捜索の不当性を以下に具体的に述べる。

 

1.事件を口実にした寮自治会に対する不当な弾圧である

1-1.捜索場所の不当性から

先ず、捜索場所と事件との関連が不明であり、捜査員に説明を求めても明らかにされなかった。関連があると判断した根拠を明らかにすべきである。

根拠が明らかにできないならば、証拠の捜索が目的であるとは言えず、単に寮に家宅捜索する口実を設けているとしか考えられない。このことから、本件捜査の目的は寮生を威圧し、生活を破壊するものであると言える。

1-2.マスコミ各社への事前の情報漏洩から

寮自治会に連絡する以前にマスコミ各社に情報漏洩していた。2014年11月の警視庁による寮への家宅捜索の際に初めて行われたこの手法は、マスコミ各社に寮に関する偏った報道をさせ、それによって寮自治会に揺さぶりをかけて寮自治会の団結を破壊し、寮自治を内部から解体させようという卑劣な行為である。

1-3.「押収すべきもの」の不当性から

被疑者が3か月近くも以前に公務執行妨害を犯した証拠が寮内から出てくるとは到底考えられず、さらにこれらの押収品と事件との関連については、寮生が説明を求めても明かされることはなかった。事件を口実にした自治会への不当な介入・情報収集・弾圧であると言える。

 

2.現場での公安警察・機動隊の不当な行為

2-1.捜索令状の提示を伴わない敷地内への侵入

京都大学の敷地内に入る前に、寮自治会と大学職員に対し、捜索令状の全容を明らかにしなかった。さらにそのまま、捜索場所であるB棟地下、B棟201号室、B棟210号室まで突入した。

前項で述べた突入の後も、1時間以上に渡って、寮生による令状提示の要求を拒否した。

その後、玄関で3件の令状を提示し、寮生に読み上げさせたものの、全文を明かさなかった。既に捜索場所に突入している状況で「証拠隠滅の可能性がある」などという筋の通らない理屈をもって被疑者氏名を指で覆い隠し、「差し押さえるべき物」を記した別紙については「提示の必要がない」として提示しなかった。

令状の不提示は令状主義を定める憲法35条及び刑事訴訟法218条に反しており、捜索の正当性を著しく損なうものである。

2-2.生活空間の破壊と寮生への威圧

捜索中、寮駐輪場や玄関付近など、捜索場所でない場所を占拠した。明らかに必要のない人数規模の機動隊員によって駐輪場および玄関から捜索場所までの経路を不必要に占拠し、寮生の生活空間を侵し、寮生を威圧した。これはセンセーショナルな映像をマスコミに撮らせるためのパフォーマンスである。

そもそも機動隊の動員自体が不当である。捜査員は「捜索の妨害を防ぐため」と主張していたが、捜索範囲の広さに見合った人数の捜査員だけで十分事足りるはずである。以前に寮生が捜索を物理的に妨害した事実があるのかと尋ねても返答はなされなかった。

2-3.寮生立会い無しでの捜索開始

「2-1」で述べたように令状提示を拒否する一方で、さらに、「寮生の立会人を早く出せ。捜索を始める。」と寮生側に執拗に要求し、強行的に捜索を開始しようとした。

寮生立会人を用意する前に令状提示を求めた寮生側に対し、「寮生の立会いを拒否するんだな。職員の立会いだけで捜索を始めるぞ。」と言い放ち、実際にB棟地下、B棟201号室、B棟210号室において、寮生の立会いなしに捜索を開始した。

2-4.寮生らに対する人権侵害

寮生らに対する軟禁と撮影が行われた。明らかな人権侵害であり、生活破壊であると共に、不当な情報収集・公安活動である。

B棟201号室においては、当時そこに居合わせた、寮生の友人である学生に対し、「我々だけでは居室に入ることができない」などと言って、当該の学生が部屋を出ていこうとするのを拒み、軟禁状態に追い込んだ。これは私人の身体を不当に拘束するものであり、憲法31条に反する重大な人権侵害である。

その後、B棟201号室において、さらに、当時そこに居合わせた、立会人となる意思のない寮生に対して、立会いを強制しようとしたうえ、「名前を言わないから」という理由を以て、立会いを断った当該寮生の顔写真を当該寮生が拒否するにもかかわらず強制的に撮影した。当該寮生は本件被疑事件と無関係であり、また、撮影場所である居室が私的空間であることは明らかであるから、本件撮影には別個の検証令状が必要であり、令状なき強制捜査であったと言わざるを得ない。以上の理由から本件撮影は令状主義を定める憲法35条、刑事訴訟法218条に反しており、また、憲法13条に反し、個人のプライバシー権を不当に侵害するものである。

 

以上を踏まえ、再度強く抗議し、以下を求める。

 

 

本抗議文に記載した違法・不当行為が、本件家宅捜索において行われた事実を認め、熊野寮自治会に対して文書で謝罪すること

以上

 

なお、今回と同様の違法・不当行為が再度認められた場合には、法的措置も含め、厳正に対処する所存である。

 

付記

 

差出人

〒606-8393

京都府京都市左京区川端通丸太町下る東入東竹屋町50番地京都大学熊野寮

京都大学熊野寮自治会

 

受取人

 〒602-8550

京都市上京区下立売通釜座東入藪ノ内町85-3・85-4合地

京都府警察本部

 

〒604-8550

京都府京都市中京区丸太町通柳馬場東入ル菊屋町

京都地方裁判所第2民事部合議係 裁判官 松浦 佑樹

 

〒606-8351

京都市左京区岡崎徳成町1 

川端警察署警備課長 五十川 雅洋

 

(抗議文、以上。)

 

 

 

(以下、補足説明。)

10月31日家宅捜索の事実経緯

 

1.捜索の内容

1-1.捜索責任者

全体責任者:京都府警警備部公安課調査官兼警備1課調査官 警視 松居寛

 →2013年4月26日の家宅捜索で捜索証明書の「建造物侵入」を「建告物侵入」と書き間違えた人。

令状請求者:川端警察署 警備課長 五十川雅洋

令状発行者:京都地方裁判所第2民事部合議係 裁判官 松浦 佑樹

B地下ガサ責任者:京都府警警備部警備第二課 警部 大川雅康

居室①ガサ責任者:京都府警警備部公安課 警部 山内大介

居室②ガサ責任者:京都府警警備部公安課 警部補 池田勝幸

身体・車両ガサ責任者:京都府警警備部公安課 警部補 野田昌宏

 

1-2.2名の寮生被疑者の容疑 (両名とも11月17日に既に釈放されている。)

①寮生A:公務執行妨害

 2017年8月10日早朝 京大職員(「みなし公務員」となるそうです。)による正門前の立て看板撤去業務を妨害したとされていた。

②寮生B:公務執行妨害

 2017年8月9日昼 京大職員(「みなし公務員」となるそうです。)による放学者監視(撮影)業務を妨害したとされていた。

 

2.捜索の経過

2-1.寮生2名の逮捕

当日、9時過ぎに1名、3限の授業に向かう途中で1名の寮生が逮捕される。

 

2-2.突入から令状提示まで

・13:05頃 寮事務室に厚生課から家宅捜索の連絡が入る。

・13:08頃 機動隊が正門・玄関通過、捜索場所(B棟地下、他居室2か所)まで突入。

   この際令状提示無し。駐輪場の一部と玄関から各捜索場所までの経路を機動隊が占拠・封鎖。

   玄関に捜索責任者が戻ってきて、寮生の立会いを要求。

・13:15頃 厚生課などの職員と第三小委員会(以下、第三小委)の教員らが到着。

・13:10頃~14:00頃、B201に偶然居合わせた学生(住人の友人)に対し、「我々だけでは居室に入ることができない。ここに居ろ。」と言って、当該の学生が部屋を出ていこうとするのを阻み、約1時間に渡り軟禁した。

・捜査員は玄関での令状提示を拒否し、「捜索を始める。寮生の立会人を早く出せ。」と寮生側に執拗に要求し、強行的に捜索を開始しようとした。

 その後、実際にB棟地下、他居室2か所において、寮生の立会い無しに捜索を開始した。

・14:00頃、捜索中の居室に、その部屋の住人が入ったが、捜索立会いを強要されそうになり、その後30分程度問答を続ける。立会いを拒否し続けると「名乗らないから」という理由で突然顔写真を撮られ、肖像権を侵害された。

・14:20頃 玄関で捜索場所3か所について、計3枚の令状を提示させ、寮生が読み上げる。

 

2-3.寮生立会い開始以降

・14:30頃 寮生3人を立会人として決定し、第三小委委員とともに各捜索場所へ移動する。

・寮生立会人が用意された後、B棟地下にて、玄関で提示されなかった4枚の令状が提示された。

・B地下捜索終了後、寮駐車場と特定の車両への令状、計2枚が玄関で提示され、読み上げられた。

・16:02頃 全ての捜索が終了。