大学当局による寮自治への介入に対する声明

 

 

 熊野寮自治会は、昨年来特に激しく、大学執行部(当局)による自治活動への介入を受けており、特に寮内設備改修の条件として、寮生の名簿提出を要請されています。

 熊野寮自治会は、寮の管理運営に関して公的な最終決定権を持っており、大学当局に管理される組織ではないので、寮生の名簿を大学当局に提出する必要はなく、名簿を自主的に管理してきました。その代わりに、熊野寮の社会的な役割と責任を果たしていることを示すため、京大新聞紙上で入退寮者を発表することで、自治活動を正当に行っていることを証明してきました。このことは、1971 年に京大当局と熊野寮自治会の間で約束された事項に基づいて行われてきたものであり、大学当局も認めてきたものです。

 しかし、近年、京大当局がこうした約束を一方的に踏み破ることが増えています。京大当局の権力行使を制限し寮生や寮自治会の権利を守るために結ばれた約束を破棄すれば、京大当局による一方的な専制が進行することは明らかです。

 今回の名簿提出の要請では、どの部屋にだれが住んでいるかなど、寮生の個人情報に深く踏み込む情報の開示が、何のために必要になるかの説明や根拠もなく求められています。こうした情報を収集する目的は、寮生を個別に管理する一方で寮自治会を解体し、熊野寮をアパート同然の建物に変えていくことなのは明白です。その先に待っているのは一方的な値上げや管理強化による排除です。

 熊野寮には多種多様な方が住んでいます。これまでにも幼児と同居しつつ学びを継続する人、精神疾患や身体の不調等で一時的に学籍喪失に追い込まれた人、院試浪人や就職浪人、博士課程満期退学者、京大当局による一方的な放学処分者など、やむを得ない事情を抱えて熊野寮での居住を継続している無学籍者は多数おります。開かれた大学という理念からすれば、元来京都大学は学ぶ意思と能力がある者すべてに開かれているべきです。理想と現実とのギャップを埋めて、安心できる生活の場と学びの場を作ってきたのが、熊野寮自治会を始めとする自治会です。

 このような管理強化がなされてしまえば、寮自治会による自主管理と当局との対等な交渉によって果たしてきた京都大学の社会的な役割、すなわち、安価な価格で住むことができ、多彩な人に安心して京大で学ぶ機会を保障し、構成員同士の豊かな結びつきにより新たな学問を生み出す場としての役割を、もはや達成できなくなるでしょう。

 そして、今回の名簿提出の要請が、寮生のライフラインを握りながら、これまで当たり前に行われてきた設備改修の交換条件として提示するという、脅迫行為の様相を呈しながら行われていることも看過することができません。

 さらに、京大当局に対して異議を唱える活動を行っている学生に対して、一方的な懲戒処分がかけられることが横行している現在、京大当局は自らの利害に沿って「放学処分」によって学籍を有する者を選別できます。このような状況で、熊野寮に居住する権利を学籍者に限定することは、熊野寮に住むことができる者を選別する一方的な権力を京大当局が持つことに等しいです。

 熊野寮自治会は、今後も多彩な人に京大で学ぶ機会を保障し、社会に新たな知を発信していくために、寮生による自主管理を続けていきます。このことは、京大で学ぶ方々にはもちろんのこと、全社会の構成員にとって利益的なことと確信しています。そのためには、今回のような京大当局による管理強化を目的とした自治への介入を許すことはできません。多くの方に、この問題に注目し、大学当局による自治への介入に抗議する立場に立って頂きたいと考えています。よろしくお願いいたします。

 

 2022年5月11日

 京都大学熊野寮自治会