金沢大学泉学寮の廃寮に反対する全国学寮交流会の声明

 

 去る3月16日、金沢大学泉学寮で行われた全国学寮交流会にて、泉学寮の廃寮化に反対する声明を採択しました。熊野寮自治会もこの声明に賛同します。

 

以下本文

 

金沢大学泉学寮の廃寮に反対する全国学寮交流会の声明

 

2023 年 3 月 16 日 

2022 年度第2回全国学寮交流会

 

 全国学寮交流会は、金沢大学当局による学生寮の廃寮化に対して、強く反対します。

 

 日本各地の学生自治寮は、所得・門地・身分によらず学ぶことができる教育の機会均等を 担保する上で大きな役割を果たしてきました。昨今の景気変動・物価高騰に伴い、安価な学生寮の存在はその重要性を増しています。特に住まいや学習環境、コミュニティを保証する ことは学生の孤立を防ぎ、修学の実を挙げる上でも肝要です。激動する現代において、学生 自治寮は増強されるべき存在であり、今回の金沢大学の決定は時代の流れに逆行するものです。  

 

 特に、金沢大学泉学寮は、創立以来 50 年以上にわたり、地域住民、商店の方々と緩やか なコミュニティを形成してきました。泉学寮を中心とした地域に広がる自治空間を通じて、 学生は世界に通じる学問を学び、地域の方々と共生してきました。金沢大学のビジョンの中核には『地域と世界の 2 つの視点を互いに往還させながら、未来の課題を探求し克服する知恵「未来知」により社会貢献を果たす』という宣言があります。このビジョンを数十年に渡り社会実装してきたのが泉学寮です。今、学生・地域住民・市議会議員・国会議員の皆様 を含む多くの反対の声が上がる中、あえて泉学寮廃寮化を強行する姿勢は、未来を生きる学生として、また、学生が作る学寮の一員として、とうてい看過できないものがあります。

 

 加えて、泉学寮自治会が試みてきた数年間にわたる対話を基盤とした意思決定・合意形成 に対する試みを、大学側がほぼ一方的に無視してきたことは、許容し難いものです。 

 

 大学当局は「寮の老朽化」「不採算性」「民業圧迫」「寮の不人気」を理由に廃寮を通告し てきていました。しかし、これらは理由として不十分です。文部科学省への照会によって泉学寮は直近に行われた検査において耐震基準を満たしており、安全性に問題がないことが 明らかになりました。そして福利厚生を本来の目的とする学生寮は、採算性を重視する施設 であるべきではありません。民間のアパートに住むことも困難な経済状況の学生こそが寮 を必要とするのであり、民業圧迫は理由になりません。また、寮の不人気も定員にまでは満 たないものの、廃寮を宣告された時点で 100 名を超える寮生が居住しており、需要は十分 にありました。さらに言えば、社会的状況によっては寮を必要とする学生が将来的に急増する可能性は十分にあり、一時の寮生数の多寡によって安易に削減する判断をしていいよう なものではありません。 

 

 金沢大学当局が用意している代替宿舎もまた、寮費が 3 倍ほどになってしまううえ、厳しい在寮年限があり、福利厚生施設としての学生寮を真に必要とする学生にとってのセー フティーネットとして極めて不完全なものです。 

 

 以上のように、大学当局の示す廃寮理由はいずれも著しく不適当なものです。その旨を指摘され続けてもなお廃寮を強行しようとする金沢大学当局の対応は不当としかいえません。

 

 また、寮存続への取り組みに関して、寮生との会議を一方的に終了したり、寮生への懲戒処分を示唆するような通告があったことも確認されています。さらに、寮の老朽化に関して は、耐震検査の結果など、合意形成に必要な具体的かつ十分な事実情報を提供しないまま、 議論を一方的に進めようとした姿勢も問題です。 

 そして、生命維持に必要なライフラインを途絶すると宣言し、寮生の生命を人質にとって退寮を迫るということは大学当局が一方的に居住の権利を収奪している人倫に悖る状況です。 学問と教育の場である大学の対応として、甚だ不誠実であると言わざるを得ません。

 

 金沢大学の掲げる「オール金沢大学」の中に、泉学寮を中心とする学生・地域の共同体は含まれていないのでしょうか。  

 

 金沢大学当局には、県内外からの 4132 筆の署名、並びに先日の衆議院文部科学委員会での永岡文部科学大臣・宮本岳志議員・文部科学省職員らの討議内容をふまえて、廃寮の撤回、 地域の共同体と共に学生が学ぶ空間の維持を求めます。