総長室突入に関する声明

大学の決定権を取り戻すたたかいを始めよう。

 

 この数十年の間に政府主導で進められた大学改革は、教職員や学生から徹底的に決定権を奪い、大学の自治を過去のものにした。今や学長と数人の役員が独裁的な権限を握り、教授会は学長に「意見を述べる」ことしかできない。学生に至っては対話の場すら奪われ、一方的な管理強化と権利破壊にさらされている。

 「自由の学風」と謳われた京都大学も同じだ。かつて石垣を埋め尽くした立て看板は撤去され、11月祭は禁酒となった。キャップ制で選択の自由が奪われ、拠り所であった保健診療所は一方的に廃止され、学生寮の解体をめぐる裁判の判決が迫っている。何よりこうした権利破壊に抗議する学生に対して、退学や無期停学を含む懲戒処分が繰り返されてきた。

 自由と自治に代わって、自己責任と競争原理が大学を支配している。

 

 大学改革は今、最終段階に入っている。先日、国立大学法人法改正案が衆院可決された。新たに設置される「運営方針会議」は、政府が任命する経営者と学長で大学の意思決定を行うというものだ。国や大企業が大学の上に立って、直接支配することになる。

 この先に何が待ち構えているのか? かつて戦争に加担した反省から生まれた大学の自治が解体された先にあるのは、今再びの大学の戦争動員だ。すでに「経済安全保障推進法」に基づき、2500億円もの予算規模で大学・研究機関の軍事研究への動員が始まっている。

 それだけではない。今、イスラエル軍によるガザの人々へのジェノサイドが行われているが、現政権はパレスチナの民族抑圧の歴史を捨象してイスラエルの「自衛権」を擁護し、虐殺に加担している。国策に追従するということは、このような歴史修正を容認し、現実の戦争と虐殺に加担することだ。

 そして湊総長は、去年10月に全国の大学に先駆けて“経済安全保障“担当の理事を任命するなど、率先して国策に追従してきた。学生・教職員から決定権と権利を奪い、国策への恭順を強いて戦争に道を開く湊総長体制を、もうこれ以上許すことはできない。

 

 我々は去年の寮祭で、湊総長に直談判するべく総長室突入を敢行した。これに対する湊総長の回答が、学内への大量の警察導入だった。総長と国家権力がタッグを組んで学生を弾圧したのだ。

 しかし我々は集まった仲間と共にスクラムを組んで闘い、本部棟への侵入を果たした。大学職員や警察による妨害や弾圧、処分や逮捕……一人では立ち向かえない権力の攻撃も、本気で団結して一緒に行動すれば必ず乗り越えられる。

 京都大学当局はあれから11ヶ月経った今更になって、総長室突入を「煽動した」とされる学生を呼び出して処分しようとしている。最終段階に入った大学改革と戦争情勢の激化を受けた弾圧のエスカレートであり、絶対に許すことはできない。

 

 これで我々が怯むと思ったなら大間違いである。我々は今再び総長室突入を敢行する。それは総長に直談判するに留まらず、学生の声に耳を塞ぎ、権力に縋り付く総長を取り除くためである。学生の力を示し、決定権を明け渡せと迫るためである。大学の自治を復権し、国家による戦争動員を拒否するためである。そして権力の抑圧に人々が立ち向かうことができることを証明するためである。大学の現状に、社会の矛盾に、そして戦争に向かう世界に対して怒る全ての人々に訴える。奪われた決定権を取り戻すたたかいを、ここから始めよう。