時計台占拠は、自由を勝ち取る最前線だ。
京大で、自由が奪われています(※1)。授業で、サークルで、研究室で、キャンパスのあらゆる場所で。表現の自由は一方的に規制され、生活は脅かされ、対話は拒否され、抗議した学生が次々と懲戒処分を受けています。ひと握りの役員会(※2)が独裁を敷き、教職員の権利も奪われています。
全国の大学で、あるいは職場や政治においても同じような悲劇が繰り返されているのではないでしょうか。自由や権利が奪われるのに憤りながらも、変わらない現実に辟易してはいませんか。
大学に、そして社会に自由を取り戻す。私たちには現実を変える力があることを証明する。そのために、私たちは今日時計台占拠に挑戦します。
時計台占拠は、京大の象徴である時計台を占拠するイベントです。役員会が支配するキャンパスを私たちの手に取り戻し、誰もが堂々と主張し活動できるようにするたたかいの最前線です。
ぜひ、私たちの思いに耳を傾けてください。そして一緒に時計台に登りましょう。
◆時計台占拠とは何か
時計台占拠は、京大の象徴である時計台の屋上にはしごで登って占拠し、時計台を1日限りの「熊野寮D棟(※3)」に変えて、誰でも自由に主張できる演壇として開放するイベントです。熊野寮祭の恒例行事として十数年間で延べ1000人近い学生たちが参加してきました。それが京大の日常であり、「自由の学風」だったのです。
◆役員会独裁によって自由が奪われてきた
しかし京大当局(※4)は時計台占拠を妨害するようになり、2017年にはキャンパス内に警察を入れるに至りました。その後時計台占拠を中断していた3年間で、次々に自由が奪われました。他の寮祭イベントも規制され、タテカンが撤去され、吉田寮生は裁判を起こされ、コロナを口実にキャンパスでの課外活動も全部規制されました。
自由を奪っているのはたった数人の役員会です。政府が進めてきた大学改革は、ひと握りの役員会に独裁的な権限を与えて大学を私物化しました。対話を求めても無視され(※5)、一方的に教職員や学生の権利が踏みにじられてきました(※6)。
何より、奪われた自由を取り戻そうとする学生を暴力的に弾圧(※7)しています。キャンパスでイベントを行うとすぐに職員が大量に駆けつけて監視し、妨害し、時には暴行します。毎年数千万円の研究経費を流用して専門の警備員まで雇っています。そして抗議した学生に次々に停学などの懲戒処分を下しています(※8)。
役員会の顔色を伺い、処分に怯えながらじゃないと課外活動一つできません。政府や企業の顔色を伺わなければまともに研究もできません。自由はなく、金もうけや軍事研究のために動員されるようになっていく(※9)。こんな大学はもうたくさんだ!
◆自由は行動によって勝ち取るものだ
京大の「自由の学風」は、学生の活動によって実現したものです。大学の規程上は、タテカンも集会も学生自治寮も全部否定されています(※10)。限られた権利を学生同士で奪い合うイス取りゲームではなく、みんなで抵抗することで一つひとつイスを増やして当局に認めさせてきました。熊野寮が月4100円を維持しているのも、女性や院生・留学生が住めるのも、寮外の人も招いて祭りができるのもそうです。何度もつぶされそうになりながら、必死でたたかって守り抜いてきたのです。
社会の至るところで、たたかって勝ち取られたはずの自由や権利が既得権益だと攻撃され、奪われています。自由や権利、あるいは対話の場すらあらかじめ与えられるものではありません。波風立てずにやり過ごしても窮屈になる一方です。私たちは先人たちに学び、今こそ奪われたものを取り戻すために体を張ってたたかいます。
◆私たちは懲戒処分に屈しない
私たちは自由を奪い続ける京大当局に対して何年も対話を求めてきましたが、ずっと無視されています。そんな中、私たちは新入生の「時計台に登りたい」という思いに応え、昨年の寮祭で3年ぶりの時計台占拠に挑戦しました。そして100名もの職員の妨害を跳ね除けてはしごをかけることに成功し、改めて対話するように京大当局に求めました。
しかしこれに対して京大当局は新たに9人の学生を処分しようとする過去最大の弾圧で答えました。
私たちは即座に抗議し、他の学生自治会と連携して署名を集めたり抗議集会を開いたりして反撃しました。そして理不尽な処分への怒りとたたかいはどんどん大きくなり、当局が重い処分を下せず(※11)、集会も弾圧できない状況を作り出しています。道半ばではありますが、私たちはたたかいを通じて処分を阻止し、大学に自由を取り戻す展望をつかみつつあります(※12)。
◆結び 〜時計台占拠は、自由を勝ち取る最前線だ〜
私たちは昨年の時計台占拠を理由に処分されようとしている8人と連帯して、今年も時計台占拠に挑戦します。
キャンパスからあらゆる自由が奪われ、今や熊野寮の存在をはじめ数少ない残された自由すら奪われんとしています。時計台占拠は、役員会の暴力支配を跳ね返してキャンパスに自由を取り戻す最前線です。ぜひ、私たちの思いに耳を傾けてください。一緒に時計台に登りましょう。大学に、社会に自由を取り戻していきましょう。
※ 脚注
1 私たちは抑圧や束縛からの自由を求めています。スポンサーや権威からの自由はとても大事です。例えば、製薬会社からの寄附金を受けて薬効や安全性に関するデータ改ざんが行われたり、原子力研究をめぐって京大でも国や電力会社と異なる立場の教員への差別が行われていました。教員や学生から自由が奪われたら、何が正しいのかを権力や財力によって捻じ曲げられるのを止めることができません。時計台占拠についても「京大がダメだと言ってるからダメなんじゃないの」という意見がありますが、それは「京大が言ってる=正しい」との前提に立ってはいないでしょうか。私たちは威光に惑わされることなく、やっていいこととやってはいけないことの区別を自ら行い、万人に開かれた自由な大学を守りたいと考えています。
2 総長と理事で構成される大学の最高議決機関です。理事には企業経営者の久能祐子氏や文科省の幹部経験者も入っています。また、役員会の下で経営の審議を行う経営協議会には学外委員として京都市長・京都府知事のほかに大日本住友製薬株式会社取締役会長や株式会社三菱UFJ銀行特別顧問が参加しており、産官学の主要な人物が恣意的な決定を下せる場となっています。
3 熊野寮D棟と聞いてぴんと来ない点があると思いますが、この表現は寮自治会の度重なる増寮要求に答えなかったことと、かつては総長室もあった、京都大学の権力の象徴でもある時計台を占拠し、「熊野寮D棟」と称す事によって、大学は学生のものだ、大学は熊野寮のごとく万民に解放された自由な場所なのだ、という意味合いがあります。
4 役員会をトップに置き、学生・教職員を管理する京大の機関全体を指します。
5 学生の声を直接大学運営陣に届けるための手段であり利害関係者なら誰でも参加できる「団体交渉(団交)」の申し入れは拒否され、時間制限・人数制限・役職氏名の公開を条件とした少人数交渉を当局は提示している状態です。しかし、このような形態では全ての学生の声は聞き入れられず、副学長が学生を恫喝するハラスメントを行った実例もあります。また、副学長と対面で話せる情報公開連絡会は廃止され、新たに作られた学生意見箱はネット上で学生から出た意見のほとんどを一方的に切り捨てています。私たちは密室での決定を押し付けるだけの通告や処分をちらつかせたハラスメントではなく、誠実な討論を積み重ねてものごとを決めるために団交を求めています。
6 教職員については、教授会が決定権を奪われて意見を述べることしかできなくなった他、職員組合掲示板の撤去や職員の雇い止め・定員削減が行われています。
7 具体的には、京大当局は学生のイベントを察知すると大学職員を動員して、学生を恫喝して解散させようとしたり、イベントに使う資材を強奪したり、ビデオカメラで撮影したりします。ビデオカメラや監視カメラの映像をもとに、後で個別に学生を呼び出して懲戒処分を下すこともあります。さらに、毎年約2500万円の研究経費を流用して雇った専門の警備員を使って、退学処分者をはじめとした特定の「学外者」をキャンパスから排除させています。学生が学習会で使っている本の内容まで事細かに報告させる思想検閲のようなことまでしているようです。また、集会などの大きなイベントに対してあらかじめ警察に通報して路上に待機させたり、前述の「学外者」がキャンパス内でビラ配りを行ったことに対して警察に逮捕させたりしています。また、2017年以降の時計台占拠には警察を大量導入しています。これは大学の自治、学問の自由を大きく侵害する行為です。
8 2017年2月に改訂された学生懲戒規程を使って、恣意的な懲戒処分が繰り返されています。職員の一方的な弾圧に抗議することが「職務妨害」「人権侵害」「学生の本分を守らない行為」などと言って処分理由にされています。職員の暴行に抵抗したことで無期停学処分を受けた例すらあります。また手続きとしても、呼び出しの場において弁護士同伴や証拠開示は認められず、異議を述べることすら許されないというハラスメントそのものの密室裁判が行われています。
9 大学の日常的運営に必要な運営費交付金などの基盤的経費を削減し、金儲けにならない研究をどんどん追い出そうとしています。雇用の不安定化もあいまって目先の成果や特許取得を重視する教員が徐々に増えるなど、学術を軽視する圧力がかかっています。また、軍事技術の秘密特許・秘密研究制度が審議され、外国人留学生への技術提供を許可制にするなど、軍事研究全面解禁に向けた準備が進められています。これは自由な国際交流を否定し、科学技術の発展を停滞させる可能性もあります。
10 集会の自由などの当然の権利も含めて、元々は認められていませんでした。しかし長年の努力によって認めさせ、例えば尾池元総長が「立て看板は京大の文化」と宣言するところまで発展してきたのです。
11 これまでは職員の暴行に抵抗したり止めようとしただけで無期停学処分が下される状況でした。しかし処分反対の声が広がる中で、昨年の時計台占拠に対しては譴責(注意のみ)や短期間の停学に留まっています。もちろん処分そのものが不当であり、私たちは撤回を求めて運動を継続します。
12 処分は役員会が学生を従わせるための最大の武器です。したがって処分を阻止・撤回することは、役員会から武器を取り上げ、学生の自由な活動を保障することを意味します。